人気グループ・サウンズ「ザ・スパイダース」の元メンバー、ムッシュかまやつ氏が78歳で亡くなりました。

 

私が若いころ、東京の駒沢公園で何かの撮影をやっていたスパイダースのメンバーを見かけたことがあります。

元気な若者の中にかまやつ氏もいたことをよく覚えています。

1960年代に絶大な人気だったメンバーに偶然出会えて、興奮したことがついこの間のような気持ちです。

それだけ私にとっては強烈な思い出です。

 

今のように携帯電話が無い時代は、人と人との直接的な会話が大いにあったと思います。

そんな時代に若者が集まると、「ブルーコメッツ」や「タイガース」等のグループ・サウンズの曲

を若者たちの情熱の発散ツールとして、みんな好んで歌ったものです。

 

カラオケが普及したのは1970年代以降なので、人気絶頂期は丁度その前になります。

若者がアカペラで歌うことは当たり前で、みんなで手拍子に合わせて歌った時代でした。

歌の苦手な人はそれなりに愛嬌があり、歌は若者の人間関係に大きな役割を果たしていました。

 

歌が人間関係のツールとして大きな役割を果たしていた時代から、一人カラオケやイヤホンで

自分一人好きな音楽を楽しむ時代となり、昭和から平成への大きな移り変わりは、

心の変化にも大きく表れて来ています。

 

集団から個々が重要視される時代となって来たために、

心のコントロールは自分でしなければならない時代に変わりました。

本来なら、成長するまでは家庭環境の中で親が社会のルールを教えたり、

職場や友人間の中で仲間が教えてくれたりしたものです。

今は残念ながら多忙な社会に振り回されてメンタル不調になりそうな環境と戦っているために、

余裕が無い親や仲間が、教えるべき社会常識や人間関係に必要な様々な常識等を他人に伝えたり、

子ども達に示すことが不十分で、いつの間にか心の中に音楽が踊っていないような余裕の無さを感じます。

そんなことが、今の社会に大きな影を落としていると、かまやつ氏の悲報を聞いて改めて思う次第です。

 

      心療対話士協会 石井利幸